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ストリートとアートの関係を再考する「STREET 3.0」連携企画「淀壁」トークイベントレポート




淀壁は大阪出身のアーティスト・BAKIBAKI氏が発起人となり、大阪・十三で推進する壁画プロジェクト。2025年までに30点を目指し、国内外のアーティストを招聘して制作を進めています。十三のシアターセブンで12月26日(火)、BAKIBAKI氏 と淀壁実行委員でWALL SHARE株式会社の川添孝信氏、キュレーターの沓名美和氏が、淀壁やミューラル(壁画)カルチャーについてトークを繰り広げました。


淀壁を始めたきっか けはコロナ禍だったとBAKIBAKI氏は語ります。

「医療従事者の方々へ敬意を込めて淀川区役所の向かいの建物にナイチンゲールをモチーフとした壁画を描きました。これまで海外で何度も壁画を描いてきましたが、自分が住む街、また区役所の向かいというとてもパブリックな場所に壁画を描く行為はとても責任重大でした。その時に絵描きとして、街に、社会に貢献できるかもしれないと思ったんです。同時に、今まで自分が出会ってきたアーティストの壁画をこの街に残したい、そして街を文化的に豊かにしていきたいという気持ちが湧きました」


医療従事者への敬意を込めて描かれたナイチンゲール

川添氏がプロジェクトを始めたきっかけは、ストリートアートへの愛が大前提にあると言います。

「ミューラルを取り巻くストリートアートのカルチャーが10代の頃からずっと好きで、このカルチャーを広められたらワクワクするなと思い始めました。ミューラルの最も好きなところはアートを身近に感じられるところ。日本ではアートが少し難しい、高そう、という印象を持つ人が多いですが、ミューラルは誰にとっても身近で子どもから大人まで気軽に楽しめる。こうしている間にも、もしかしたら近所の子どもたちが十三のミューラルを観ているかもしれない」


誰もが味わえるミューラルの持つ力。沓名氏はメキシコの芸術運動を例に挙げました。

「現代美術において壁画が登場するのは1920年以降のメキシコ壁画運動から。1910年代にメキシコ革命があり、文化革命を起こそうと壁画運動が生まれました。なぜ壁画が取り上げられたかというと、メキシコの識字率が非常に低かったから。壁画は一目でわかりやすく、外でメッセージを伝えられます。その壁画に影響を受けたのが岡本太郎。渋谷駅に展示されている《明日の神話》はメキシコで描かれました。淀壁の中にも岡本太郎を描いた作品がありますね」


BAKIBAKIとMonのライブペインティングユニット「DOPPEL」により描かれた岡本太郎

「僕は万博公園の近くで生まれ育ちました。あまりアートに触れていませんでしたが、やはり太陽の塔の存在は無視できない、どころか強い影響を受けています。人が創ったものなのに、自然と対等のエネルギーを発しているというか。太陽の塔が1970年の大阪万博で制作され、2025年に再び万博が予定されている。太陽の塔に影響を受けた世代としては、何かアンサーを返さないといけないという使命感がありました。20年来の付き合いのあるMonと一緒にDOPPELとして描きました」とBAKIBAKI氏。


「招聘するアーティストが国際的ですね」と言う沓名氏に、「日本で描きたいアーティストは世界中にあふれています」とBAKIBAKI氏。

「特に、大阪の土地柄は『面白いから描いていいよ』というノリで話が進みやすい。アーティストも、他の街を回った後に大阪に来ると『オープンマインドで楽しい』と語る人が多いですね。キュレーションする立場としては、日本にはまだ壁画文化が育っていないので、和風やアニメなど、日本らしさを伝えるアーティストの選定も意識しています」


活動を続けるには地域の方々からの協力が不可欠。BAKIBAKI氏は作品を通じて理解を得ていきたいと語ります。

「街に制作の許可を取っていても、日常の景色を変える行為に変わりないので、やっぱりどこかおこがましい行為ではある。でも、淀壁のクオリティは一定基準を保っていると自負しています。誰が見ても落書きじゃないというクオリティをキープしているつもりです」


Gravityfreeによる壁画作品

今後はヨーロッパの国とミューラルの国際交流が予定されており、ますますプロジェクトが活発化していきそうです。大阪を起点にどのようなミューラルカルチャーが生まれていくのか。淀壁は現在20点(2023年12月時点)。十三の街を歩きながらその魅力を体感してみてください。




会期:街の壁画のため自由にご覧いただけます

公式Webサイト:https://www.yodokabe.net/

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